F&Aレポート
スピーチカフェ スピーチは訓練で上手くなる
"あがり症"の人達の舞台上でのパフォーマンス
年に1度スピーチカフェを主催して今年で3回目になる。スピーチカフェとは、スピーチ発表会のようなもので、スピーチを通じてお互いを高め合い、話し方の課題や目標を情報交換する場である。今年も20代から60代までの男女30名がホールに集い、ドキドキしながらスピーチを披露した。今年のテーマは「2022年 10年後の私」。あがり症の人達が舞台の上で最高のパフォーマンスを出すためのポイントをレポートしたい。
1.原稿は見ない方が上手く話せる
今回、原稿を見ないで話すことを課題とした。スピーチは一人2分〜2分30秒。文字数にすると約700字〜1000字になるが、ほぼ全員が原稿を見ないでスピーチをすることができた。ステージに上がって、照明を浴び、客席から一身に視線を受けながら3分近く、思いの丈を述べるというのは普通の人間なら平常心で居られるはずはない。まして、スピーチカフェに集まるのは「人前で話すことが苦手」な人達なのだ。「苦手」と言ってもただの「苦手」ではなく、
いわゆる「超」がつくほど「苦手」なのだ。それでも、誰一人、途中でリタイアすることなく、最後まで堂々とスピーチを終えることができた。
原稿を見ないことで、単調な読み口調から、自然な「間」が生まれ、より「自分の言葉」で表現できるようになる。聴きやすいスピーチ、即ち、より理解が深まりやすいスピーチになる。
2.原稿を憶えないために原稿を書く
スピーチをすることが決まれば原稿を書く。一字一句きちんと書いて、文字数を数え、声に出して読んで時間をはかる。その際、言いにくい言い回しになっているところは直す。規定の時間内におさまるように原稿の長さも調整する。
原稿ができれば、塊で憶えるようにする。つまり、最初にA、次にB、その次にC、最後に再びA、、、というように。さらにキーワードを抜き出す。
練習をするときは、塊の流れとキーワードのみを意識して練習する。原稿は見ない。
一字一句憶えると、本番で一言抜けると、次の言葉が出てこないというパニックに見舞われるおそれもある。
3.ステージ上の所作とジェスチャー
実はスピーチは、話し始める前の舞台に上がるときから始まっている。歩き方、お辞儀の仕方、視線の送り方などで、上手いスピーカーかそうでないかがわかる。
また、自然な身振り手振りができるかどうかが、慣れた人かどうかを感じさせるポイントにもなる。たとえば、大きさを示すのに腕を胸の前で広げたり、「理由は3つあります」と言いながら、右手を上げて3本の指を立てるなど。
猫背になる人、お辞儀が貧相な人、そんな人はスピーチ以前の問題である。
どのように歩いて、壇上のどこで礼をするか、どのタイミングで何をするのかを理解して体の動きが伴わないと、不自然な動作になり、聴き手に不信感を与えてしまう。
4.マイクとの距離、発声と滑舌
マイクの高さと向きは自分で調整する。舞い上がってしまって、マイクとの距離が合わないままでスピーチをすると、聞き取りにくいこともある。
また、マイクがあっても声はしっかり出すことが伝わりやすいスピーチになる。弱々しい声や、滑舌の悪い話し方は、自信のなさを露呈してしまう。何かのトラブルでマイクがなくとも、肉声で伝えられるぐらいの発声で練習をしておくのがベター。
<後日談>今回、最優秀賞は「世界で活躍できる農業コンサルタントになりたい」と言った20代の女性であった。スピーチのノウハウだけでなく、内容も構成もすばらしく満場一致の最優秀賞であった。