ボストーク -- Boss Talk --
空梅雨でスタートした今年の梅雨も、後半に入り雨の日が多くなってきました。
久しぶりに税金の話題です。先日、セミナーの準備をしながら、相続税についてあることに気がついたので、今回はその点に触れたいと思います。
平成25年度税制改正の目玉の一つは、相続税改正です。これは、消費税の税率引き上げと同様、民主党政権時代から取り上げられていたもので、自民党が引き継いで完成させた形となりました。具体的には、平成27年から、相続税の基礎控除を現在の6割水準に引き下げ、最高税率を55%(現在50%)に引き上げます。現在の基礎控除は、5,000万円+1,000万円×法定相続人の数のところ、改正により3,000万円+600万円×法定相続人の数となります。この結果、相続人が配偶者と子二人のような場合、現在の8,000万円が、4,800万円となります。なお、このような増税への配慮から、小規模宅地の評価特例等も改正になっていますから、別途ご注意下さい。
ところで、問題はその理由です。自民党の税制改正大綱によれば、「地価が大幅に下落する中においても、バブル期の地価上昇に対応した基礎控除や税率構造の水準が据え置かれてきた結果、課税割合が低下する等、富の再分配機能が低下している」とされています。
確かに、昭和58年を100とする地価公示価格指数(全国全用途)は、平成4年に199のピークをつけ、平成25年には83に落ち込んでいます。つまり、平成4年の地価の半分弱になってしまっています。にもかかわらず基礎控除は据え置かれた。また相続発生に対する相続税の申告件数は、ピークの昭和62年の7.9%から下落を続け、平成23年には4.1%となっています。税収も同様で、平成5年には3兆円近かったものが、平成25年では1.5兆円を切っており、法人税7.8兆円、所得税13.5兆円、消費税10.2兆円と比べても、相続税の税収が、格段に低いと言うことが分かります。
確かに、そのような説明を聞けば、「なるほど・・・」と思ってしまうのですが、実は、ことはそれほど単純ではありません。
例えば、平成2年当時の日本の個人が保有する金融資産は1,024兆円でしたが、平成24年には1,546兆円になっています(日銀の統計より)。つまり、不動産の価格は下落したものの、金融資産は逆に大きく増加しているのです。また、死亡者数と相続税申告を平成元年と平成23年で比べてみると、平成元年41,655申告/788,594人→平成23年51,559申告/1,253,066人となっており、申告比率は低下しているものの、申告数は増えています。死亡者数は増えていますので、その割合からすると相対的な減少にはなります。しかし、少なくとも地価下落と金融資産との関連に触れた形跡は、私が調べた限りでは見つかりませんでした。仮に、地価は下落したものの、日本人が保有する財産の性格は変化し、また分散化という傾向があるのであれば、今回の改正は、地価下落に対する基礎控除の対応ではなく、単なる増税措置と言うことになってしまいます。
が、その背景はともかく、今回の改正が、一定規模以上の資産家に大きな影響を与えることは間違いありません。遺産分けも含めて、ちょっと早めの準備が大切です。